4.ボタンの加工について

ボタンの加工は、耐久性の向上、装飾性の向上などを主な目的とし、素材製法と密接に関わり合う、また、素材製法の一部分とも言える、不可欠な知識です。


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1.染色について

2.接着について

3.メッキについて

4.彫刻について

5.塗装について

6.表面加工について

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なお、説明文中の各単語で詳細な説明がリンクされている部分があります。 単語の意味が不明瞭だと思われた際にはご利用下さい。

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1.染色について

ボタンを取り扱う上で、染色はもっとも頻繁に行われ、それだけにもっとも注意を要する加工であると言って差し支えないでしょう。染色の不備は衣服を汚染するなど、直接消費者に被害を及ぼす可能性があるのです。

a.染色と素材の関係

b.染料の種類

c.染色の方法

d.色止め

e.染色した素材の耐久性


a.染色と素材の関係

素材と染料の関係は、決して1対1に対応しているわけではなく、また一種類の染料で多様な素材をカバーすることも出来ません。

これはボタンなどのファッション関連の付属品の化学的組成が非常に多様であり、且つ、その使用される状態も、多様で過酷である上に、その耐久性は非常に高いレベルを求められるからです。

主な素材と染色の関係を簡単な表にまとめてみました。

  染料 染色促進剤 色止め 備考
カゼイン 酸性染料 酢酸など カゼイン専用色止め剤 吸水性のある素材なので、染色の堅牢度は低いと思われがちですが、色止めをしっかりするとポリエステル以上に染色堅牢度は高くなります
ポリエステル 分散染料 キャリヤー 還元洗浄剤 水に溶かした染料の濃度、染色温度、染色時間還元洗浄をきちんとしていないと簡単に色落ちします。

間違って、エポキシ樹脂用染料を使用すると、極端に耐光性が低くなり、簡単に色褪せてしまいます。

ナイロン 酸性染料

分散染料(エポキシ樹脂用)

  酸性染料を使用の場合はナイロン専用色止め剤

メッキパーツがある場合は組み合わせボタン専用色止め剤

酸性染料を使っても、カゼインと同じ色止め剤を使用するとボタンの表面が溶けてしまいます

ABS樹脂との組み合わせボタンとしての製品が多い素材なので、組み合わせになっている場合は、染料色止め剤に注意しないと、メッキパーツが腐食します。

アクリル 分散染料 キャリヤー 還元洗浄剤 アクリルは染料が浸透しにくく、また、あまり高温で煮込んでしまうと変形してしまうので、染色には注意が必要です。

また、染色後のアクリルは材質によってはドライクリーニングで色落ち、変形する場合もありますので、クリーニング検査に出すなど、取り扱いには注意が必要です。

ABS (分散染料)     ABSも染料によって染まりますが、殆どの場合メッキされて使用される素材であり、また、堅牢度、耐光性もあまり高くはありません
ユリア樹脂 染色不可 染色不可 染色不可 染色不可:決して染色しないで下さい。
エポキシ樹脂 エポキシ樹脂専用分散染料 キャリヤー エポキシ樹脂専用色止め剤

メッキパーツがある場合は組み合わせボタン専用色止め剤

エポキシ樹脂は高温に晒されると極端に接着強度が低下しますので、染色の際には注意が必要です。

エポキシ樹脂はメッキボタンに流し込んで使われることが非常に多いので専用の染料専用の色止め剤を使用しないとメッキが腐食します。

エポキシ樹脂にポリエステル用染料を使用すると、極端に耐光性が低くなり、簡単に色褪せを起こします。

UV樹脂 分散染料 キャリヤー(但し、ほんの少し   UV樹脂は染色が不可能な素材の表面に塗装されて使用される場合が殆どですが、それだけに、はがれる危険性に注意が必要です。

染色の際にキャリヤーの使用量が少しでも多すぎるたり、染色温度が高すぎるとUV樹脂は簡単にはがれてしまいます

繊維 シルク 酸性染料     繊維の染色には一般に専門的な技術を要する場合が多く、専門の業者にお願いするのがよいでしょう。

特に、ウール、リネンなどについては、繊維関係製品を取り扱っていらっしゃるメーカーさんが「保証できない」とおっしゃる場合もありますので、注意して下さい。

また、レース、ブレードなど、2種類以上の繊維が使用されている製品は特に注意が必要です。

レーヨン・コットン 直接染料
ウール・リネン  

以上の内容は非常に基礎的な情報に過ぎません。染色ボタンを取り扱う皆さんは、以上のことをふまえた上で専門の業者さんに相談することをお勧めします。


b.染料の種類

内容はかなりの部分で、a.と重複しますが、染料に視点を据えて染色というものを考えることは、染色の専門家の視点で、染色ということをとらえる助けになると思われます。

染料 特徴 素材
酸性染料 動物性蛋白質を染色するのにむいている染料です。素材に吸水性があるので、染料がある程度、素材に浸透し、色止め剤で固定します。

また、ナイロンも化学的には動物性蛋白質と組成が近いため、ナイロンの染色にも向いています。

但し、ナイロンの場合は専用の色止め剤を使用しなければなりません。

カゼイン

ナイロン

分散染料 合成樹脂を染色するのに使用されています。素材に吸水性がないので、キャリヤーと呼ばれる染色促進剤で、素材表面の分子に隙間をつくり、そこに付着した色素を、キャリヤーを抜く(脱キャリヤー還元洗浄と言います)ことで固定します。

但し、同じ合成樹脂でも化学的にはかなり多様なので、現在では、ポリエステル専用エポキシ樹脂専用組み合わせボタン専用の染料が、それぞれの専用色止め剤と共に発売されています。

ポリエステル

エポキシ樹脂

ナイロン

アクリル

UV樹脂

直接染料 主に繊維を染色するための染料のようです(現在、繊維関係の資料が手元にありませんので、少し不明瞭です)。 ブレード

レース

繊維素材使用のボタン

上記の内容は、非常に基礎的なものです。染色ボタンを取り扱う皆さんは、以上のことをふまえた上で、専門の業者さんと相談して下さい。


c.染色の方法

カゼイン樹脂(酸性染料)

ポリエステル樹脂(分散染料)


d.色止め

カゼイン樹脂(酸性染料)

ナイロン樹脂(酸性染料)

ポリエステル樹脂(分散染料)

メッキパーツとの組み合わせボタン


e.染色した素材の耐久性

色落ち(プレス、クリーニング)

汚染(プレス、湿潤摩擦)

褪色、変色(薬品、光線)

物理的耐久性(摩擦、衝撃、圧力)

接着強度(摩擦、衝撃)


2.接着について

組み合わせボタンを作る上で接着は、当然、避けて通ることが出来ない工程ですが、殆どの場合、この工程は附属屋さんが受け持つことになります。

しかしながら、附属屋さんというのは営業、販売に主力を投入しているためか、技術的ノウハウが殆ど蓄積されず、トラブル・クレームが頻繁に起きている、という状況です。

接着のノウハウを蓄積し、利用することは、トラブル・クレームの件数に直接、結果として現れ、それは、利益になって現れます。

素材と接着剤の関係


3.メッキについて

ボタンのメッキ

ABS樹脂とメッキ

アルミとアルマイト加工

メッキの工程

メッキの種類

ニッケル

黒ニッケル

ロジウム

パラジウム

真鍮

アンティックメッキ

ソフトメッキ

サテー、サティーナ

ガラ剥き


4.彫刻について

ボタンへの彫刻

彫刻と他の加工の組み合わせテクニック

NC加工機

レーザー彫刻

フリクションプレス


5.塗装について

着色のための塗装

保護のための塗装

塗装不可の素材

塗装と他の加工の組み合わせテクニック

スミ入れ

UV樹脂塗装


6.表面加工について

仕上げ加工(つやだし)

つやだし加工

つや消し加工


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