1.ボタンの製造方法について

ボタンの製造方法には、今、あなたの目の前にあるような工業製品と同じだけの バリエーションがあると思って下さい。例えば、材料を削って作る溶かした材料を型に入れて作る、柔らかい材料を型の中で押し固めて作る、展性のある材料をプレスして作る、等の製造方法があるのです。


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1.型を使って作る製造方法

2.切削(削り出し・挽き物)

3.注型

4.射出成形(インジェクション)

5.ダイキャスト

6.キャスティング

7.金型プレス成形

8.プレス(フリクションプレス成形)

9.組み合わせ

10.型と製造法と素材の関係

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なお、説明文中の各単語で詳細な説明がリンクされている部分があります。 単語の意味が不明瞭だと思われた際にはご利用下さい。

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1.型を使って作る方法

工業製品の殆どは型に材料を入れて作るか、材料を削るか、材料をプレスするか、で作られていると言って過言ではないでしょう。

ボタン等の場合、を使用すると、機械による生産性が高く、 しかも、削って作る製法よりもデザイン性に優れるという利点があります。 ただ、残念ながら、すべての素材とデザインがこの製法で実現出来るわけではなく、 また、機械による生産に向いているということは、 少ロット生産が難しいということでもあるのです。

ファッション業界において、商品の価値は、 ただ、安いということではありません。 みんながみんな着ている服なんて、あまり欲しくないですものね。 トレンドにマッチしてても、 どこか人と違ったイイところがないとつまらなくないですか?

さて、型を使って製造する方法には、金属ボタン等に向くゴム型キャストダイキャストABS等の熱可塑性樹脂(熱を与えると柔らかくなる樹脂です)に向くゴム型インジェクション(ゴム型を使った射出成形です)、 金型インジェクション 真鍮アルミのバックル等に使われる砂型鋳物製品等に使われるロストワックス製法、まれに真鍮バックル等で使われる木型鋳物ポリエステル等の熱硬化性樹脂(熱を与えると固まる材料です)の生産に向く注型・ゴム型注型等の製法が使われています。

注型

射出成形(インジェクション)

ダイキャスト

キャスティング

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2.切削加工による製造

この製造方法は一番古くから存在するモノ作りの方法ですね。 ボタンの世界では主にラクト(カゼイン樹脂)素材・ポリエステル素材の加工に使われる方法ですが、他には真鍮アルミ天然素材の多く、ガラスのボタンにも使われる方法です。

挽き物(ひきもの)、削り出しとも呼ばれる加工方法です。

作るボタンの素材によって使う機械が変わってくるのですが、 一般的にはシンプルな表穴ボタン裏穴ボタンの製造には自動機があるので大量生産に向く方法なのです。

それは商品の値段が安くなる要素なのですが、 反面デザインに限界があるという欠点もあります。 細かなデザインを可能にする機械もありますが、 生産性には天と地程の開きがあり、 切削加工ならではの加工精度と生産性のバランスが問題なのです。

材料を丸い板状のもの(ブランクタブレットと呼ばれます) にしてから商品の形に加工し、糸を通す糸穴裏穴を開けて、機械による削り跡等を研磨します。

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3.注型加工による製造

工業製品の製造方法としては、型を使うという方法は、 現在もっともポピュラーな方法ではないでしょうか。 液状になった材料を型の中に注ぎ込んで固まらせて作る方法です。主にポリエステル素材のボタンの製造に使われます。金属ボタンの製造もこのような形の方法なのですが、その場合はキャスティング(キャスト)と呼ぶのです。

液状のポリエステル(硬化する前のポリエステルはさらさらの液体なのです)をボタンのサイズよりも若干直径が大きいパイプの中に注ぎ込み、 熱を与えて硬化させ、その棒材をカットしてタブレット(ブランク)を作り、 これを切削してボタンにします。

平たいところに注ぎ込んで硬化させた板材を丸く打ち抜いてタブレットを作る場合もあります。

また、近年ではシリコンゴムの型に流し込んで、硬化させ、 デザイン性のある形を作り出すことも出来るようになりました。 ポリエステルトグルボタン(ダッフルボタン)等の製造方法です。

しかしながら注型で作られたボタンは 表面に型から剥離しやすいように塗られた剥離剤や材料の硬化の仕方の為に、 表面が削られていないものは染色すると色ムラがでたり、色褪せ、色落ちするので、 注型加工のみで作られたボタンは染色して販売されることはありません。

ポリエステル棒材を作る場合の生産性は高いのですが、 その他の場合には生産性的にはなかなかつらい方法です。 ところが困ったことに、この方法でしか表現できない素材の模様・柄・風合いというのがあるのです。

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4.射出成形による製造

こちらも型を使って物を形作る方法です。 融解しても粘性があるような材料が対象となる場合が多い方法です。

この製法は一般にインジェクションと言われます。

今、現在の工業製品の殆どに使われているのではないかと思われる、ABS樹脂などを中心に、アクリルナイロン等の材料に向く方法です。 型に圧力をかけて材料を射出し、冷え固まったものから、 (プラモデルにもあるような)枝(ランナーと言います)を切り取って製品を作ります。 型は硬質ゴムを使う場合と、金型を使う場合がありますが、 ゴム型は少ロット生産に向く反面、耐久性に問題があり、 金型は少ロット生産が出来ません。

ダイキャスト製法の場合も圧力をかけて材料を金型に射出するという点では共通する要素があります。

殆どの場合製品の裏側は平らで、型の合わせ目(パーティングライン)が商品に残っているので 簡単に見分けがつきます。

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5.ダイキャスト製法

殆どの場合、亜鉛合金(成分の殆どは亜鉛ですが)素材の製法として使われる方法ですが、 非常にまれな例には真鍮でも使われることがあります。

亜鉛というのは材料としては比較的安価丈夫である反面、 非常にきめの荒い金属なので、金型に圧力をかけて材料を流し込むこの方法が使われます。

加工の細密さ正確さ、また、大量生産性では非常に有利な製法ですが、 反面、融通性に欠ける製法ではあります。

製品の特徴はインジェクションのものと似ており、裏側が殆どの場合平らで、 製品にうすくパーティングラインが残っています。

ブレザー等に使われる金ボタン等はこの製法で作られたものが多いのです。

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6.キャスティング

一般にキャストと呼ばれている製法で、正確にはゴム型キャスティングといったところでしょうか。 材料は殆どの場合、 キャスト(この場合は材料を表わします)と呼ばれる錫と鉛の合金を材料にするのですが、亜鉛製品の少ロット生産コストを下げるために、 使われる方法でもあります(亜鉛の場合はきめが荒いのでデザインに制約が出てきます:「亜鉛ゴム型」と呼びます)。

ゴム型そのものに弾力性があり、型の加工が比較的容易なことから、 金属ボタンでは非常にポピュラーな製法であります。 その反面、型の温度に対する耐久性が非常に低く、材料がほぼ、 錫合金に限られてしまうという欠点もあります。

しかし、錫合金のきめの細かさはそのまま製品のデザインの繊細さに生きることとなり、 少ロット・多品種でなければならないファッションアイテムには絶好の製法でもあります。

コスト的にも比較的安価な部類におさまると思われますが、 少ロット向け製法であるため、コスト抑制にはおのずから限度があります。

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7.金型プレス成形

実を言うとこの製法の表現は若干紛らわしい部分があるのですが、 この製法を呼ぶ特定の呼称を私は知らないので(んー、知識が浅いなぁ) とりあえずこのページではこう呼んでおきます。

これはユリア樹脂(尿素樹脂)で作られるボタン等に特有の製法で、 まず、粉末のユリア樹脂に水と粘性のある液体(シロップと呼ぶそうです:甘いのかなぁ)を 混ぜて粘土のように練り上げます。 そして顔料で色をつけ、その粘土状のものをバームクーヘンのようにまいて 直径30〜40センチの棒状にします(この時点で素材に柄・模様が作られるのです)。 それを細い筒から押し出した棒に加工し、タブレットにカットします。

このタブレットを型の上にならべて、高い温度と圧力プレスしてボタンの形にするのです。

この製法は他の材料で使われることは殆ど無く、ユリア樹脂特有の製法といえるでしょう。

この製法は金型使用の特徴として、少ロット生産はほぼ、不可能で、 その反面、非常に安価な製品が作られるのです。

製品には本当にうっすらと型を上下に分割した跡(パーティングライン)が見える場合があります。 また、形が出来上がった製品を裏側からピンで突き出して製品を取り出すので、 裏側にピンの跡が判別出来る場合もあります。

紳士服のスーツ等に使われるボタンはこのユリアボタンであることが多いですね。

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8.フリクションプレス成形

この製法は展性がある材料に使われる例が非常に多いのです。 代表例としては真鍮で、学生服等についていた中が空洞(かぶせボタンなどと呼びます)の金属ボタンがそうです。

これは材料、製品に、金型をぶつけて(ほんとうにそういうイメージなんです) 表面に形を出す手法で、真鍮の場合は1ミリよりずっと薄いテープに型を打ち付け、 抜き取ってしまいます。

ただし、若干弾力性を持つようなポリエステルカゼイン皮革ボタン、厚手の真鍮にも使われる場合があります。比較的浅い、上品な模様が出せます。

この手法も金型を使用する以上少ロット生産は出来ません。

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9.組み合わせ

これはいろいろな加工法で作られたボタンのパーツを 接着、非接着のはめ込み(ワンプッシュと呼んでいます)、またエポキシ樹脂の流し込み等をして製品を作る方法です。

この方法を利用することで製品のバリエーションは無限に増える反面、製品の取り扱い、耐久性に制限が増えてしまう、という欠点もあります。

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10.型と製造法と素材の関係

ボタンを製造するにはどんな型があり、どのような製造法があり、それらの組み合わせはどのような素材に使われる方法なのか?これはそれぞれの要素が多い為に、非常に憶えづらいものがあります。

そこで、簡単な表にしてみました。

型\製造法 注型・キャスティング 射出成型 プレス成型
ゴム型 キャスト
亜鉛
(ピューター)
ABS
ナイロン
アクリル
 
シリコンゴム型 ポリエステル
ポリウレタン
   
金型   ABS
ナイロン
アクリル
亜鉛(ダイキャスト)
真鍮(ダイキャスト・輸入品等で希に見られる)
真鍮(かぶせボタンなど)
アルミニウム(くるみボタンの金具)

ポリエステル
ユリア
砂型 真鍮鋳物(主にバックル)
アルミニウム(希にバックルなど)
   
木型 真鍮鋳物(主にバックルの試作品)    
石膏型 真鍮(ロストワックス)
(ロストワックス)
   
棒管 ポリエステル(材料)    
バット ポリエステル(材料)    

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