Topics!

ここは、私が、日々、思い付いた事などを、「言いたい放題」しているところです(笑)。
日付のところをクリックして下さい。

1998/07/08 前売りのボタン屋さん
1998/07/03 PRE−TEX46レポート
1998/05/26 ホビーショーレポート
1998/05/02 物流システムとボタン
1998/03/22 アウトソーシングについて
1998/03/19 ヨーロッパコレクションの情報の扱い方について
1998/03/19 と、いうわけで
1998/01/28 IRIS「総合展示会」レポート
1998/01/24 JAPAN CREATION '98 緊急レポート
1998/01/20 アクリルボタンにまつわるエピソード
1998/01/19 雪と靴の関係
1998/01/03 年賀のご挨拶
1997/12/21 クリスマスパーティー
1997/12/12 PRE-TEXレポート

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前売りのボタン屋さん

先日、前売りのボタン屋さんを見てきました。一軒は目黒の「& STRIPE.」、もう一軒は原宿の「la droguerie.」です。二軒とも雑誌などで紹介されていて、手芸に興味のある人だけでなく、ファッションに興味のある人に広く知られたお店ですね。

私が、以前勤めていたのは、アパレルメーカーさんにボタンを卸している会社でしたが、さて、前売りのボタン屋さんはどのような感じなのでしょうか。


& STRIPE.」(アンド ストライプ)

本店
〒153−0042
目黒区青葉台1−25−3小野ビル1F
TEL FAX 03−3714−3733

私たちが見に行ったのは本店ですが、他に、数寄屋橋阪急の1Fにもお店があります。
数寄屋橋阪急店
〒104−0061
中央区銀座5−2−1数寄屋橋阪急1F
TEL 03−3575−2231

関西の方なら神戸店ですね。
神戸店
〒650−0038
神戸市中央区西町33番地ジーニアスギャラリー2F
TEL 078−333−2941

淡い色を基調にした、小さなお店です。

ボタンは小さなカードに付けられて並べられています。カードに「PARIS」「ITALY」などとスタンプされているものは輸入ボタンです。国産のボタンは、当然、他のお店でも入手できるものも多いのですが、こちらのお店の素敵なところは「見せ方」が非常に上手なところにあります。ボタンをトレーなどに「ごちゃっ」と入れておかないで奇麗に並べているので、ボタンも見やすく、また、良く見えます(あ、別に商品が良くないということじゃないんですよ。良い商品もより良く、ということです。)。

それから、ビーズなどのアクセサリーパーツも、バリエーションを抑えて良いモノを置いてあります。アクセサリーパーツは輸入品のようですね。国内ではあまり見かけないものもかなりありました。
アクセサリー、また、そのパーツと一緒にボタンが並んでいることで、非常にボタンが引き立っています。

またアンティークのボタンもあり、現在では生産されないような凝ったボタンもありました。

実際には、ボタンとアクセサリーパーツとどちらが売れているんでしょうね。ちょっと知りたいところです。


la droguerie.」(ラ・ドログリー.)

〒150−0001
渋谷区神宮前4−26−18原宿ピアザビル1F
PHONE & FAX 03−5410−2381

表参道のキディーランドの向かいと言った方がわかりやすいですね。こちらは「Button Boutique.」となっていて、同じく「Ribbon Boutique」の「Des Quatre Vents」(キャトル・ヴァン.)と一緒になっています。

店内はヨーロッパ調の落ち着いた色合いで統一されています。ディスプレイも凝っていますね。

こちらではボタンは全て輸入品のようです。ガラスのビンにボタンが入っています。生地、毛糸、アクセサリーパーツ、リボンなど豊富な輸入品でいっぱいのお店です。特に刺繍が入ったリボンは、凝ったものが多いですね。

お店の奥では簡単な手芸講習のようなこともされているようですね。

曜日と時間のせいか、それとも原宿という場所のせいか、人がいっぱいでした。


二軒のお店を見て、色々と考えました。どちらのお店にあるものも、全く同じ、もしくは、似たものを他のお店で入手できないものではありません。しかしながら、商品の展示の仕方、提案(要はプロデュースですね)に明確なコンセプトがあって、お客さんは、それに惹かれて来ているようでした。そういう点で、吉祥寺のユザワヤさんとは客層も違うようです。

けれども、こういうお店があってこそ、ボタンやアクセサリーの需要がある以上、頑張って頂きたいと思います。また、このページをご覧になっている方も、このようなお店に行って、ボタンやアクセサリーにもっと興味を持って頂いて、自分の服のボタンを自分で選んだり、自分のアクセサリーを自分で作ってみたり、ということをして欲しいと思います。


一方、アパレルメーカーにボタンを卸している附属屋さんの皆さんは、このようなお店に行かれてどのようなことを考えていらっしゃるでしょうか?商品を参考にされる方もいらっしゃるでしょうし、前売りとアパレルへの卸しの商品の違いを感じられる方もいらっしゃるでしょう。しかし、これらの前売りのお店について見るべき部分は他にあります。一般の手芸店やボタン屋さんにも広く言われていることですが、もっと、提案・プロデュースに力を入れるべきだとは思いませんか?

上の二軒のお店の素晴らしいところは、そのプロデュースにあるのです。


註釈

前売り

ボタンをアパレルメーカー卸し売りする業者に対して、消費者に小売りする業者を言います。ボタンメーカーから、卸し売り業者に売る場合は仲間売りと言います。流通経路がややこしいですね(笑)。

アクセサリー

去年はインディアンビーズのブレスレットが大流行でしたね。今年はガラスビーズのネックレスやブレスレットがいいみたいですね。それから、携帯電話のストラップを自作するというのもお勧めです。


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東京PRE−TEX46レポート

第46回 '99春夏東京プレテックス
シーズンテーマ&コンセプト
「PURE STAGE」

会場入り口です。

今回は出来れば会場の様子などを撮影しようと、知人から借りたデジタルカメラを持って行きました。ただ、ファッション業界の展示会ということもあり、カメラを持って会場内を歩くのもどうかと思い、本部から「PRESS」の腕章をお借りしました。テキスタイルの撮影・TRCの建物の撮影についてはやはり問題があるとのことでしたが、個々の参加ブースについては、交渉で了解を得られれば、ということでした。

私の無理なお願いを聞いて下さったプレテックス本部の皆様に、WEB上からではありますが厚く御礼申し上げます


今回はボタン関係よりもテープブレード関係の提案の方が人気がありました。特に生地にストレッチ性のあるものが増え、定番の一つとなったために、ストレッチテープ類はどこも人だかりでした。現在、ボタンなどの付属品が少ない服が多いだけに、付属品提案のトレンドとしてはうなずくところです。

今回のプレテックスにおけるボタン、パーツの付属品におけるポイントは、春夏シーズンということもあり、透明感です。生地のトレンドが、透明感を打ち出したものである以上、風合いを生地に合わせるのは当然なのですが、附属品は、ただ、「透明感があればいい」というわけではありませんね。アパレルメーカーさんが製品に持たせるコンセプトに沿った「透明感」でなければなりません。また、生地もレース、オーガンジーなど、それぞれ「透明感」に違いがあり、附属品にもそこまで考慮したものが求められるはずです。そういう点では、今回、かなりこなれた提案がなされていたようです。
また、
樹脂製スナップボタンが幾つか展示されていました。素材が半透明なもので、サイズも大きく、新鮮です。付属品として面白い使い方が期待できます。

プレテックスは、ここ数年、服飾付属品関係の企業の参加が減少してきている傾向にありますが、今回は少数ながら参加されている企業がレベルをかなり上げておられ、「不況だから附属屋さんにはするべき仕事がない」というのはまったくの詭弁に過ぎないと実感させられました。しかしながらこの事実は、「レベルの低い附属屋さんにはするべき仕事がない」という、市場からの警鐘だとも言えるでしょう。


(株)アイリス

アイリスさん自社で行われる総合展に力を注いでおられるとのことですが、総合展のパネルを使われたり、また新作の展示も多数で、やはり「さすが」と思わせる内容です。

私が今回一番注目したのは「Velours」(ヴェルール)と名づけられた製品群です。ベルベット風の起毛加工を施したボタン、パーツ等で、これまでにない製品です。ボール状の小さいパーツなどは業界にもありましたが、加工方法を確立されているようで、耐久性も高く、ボタン、パーツに幅広く応用されています。
この製品の素晴らしいところは、加工法として確立されているために、これまでの様々な製品、またその形状デザインがそのまま使用できるところにあります。メーカーとして、ただ、製品を新しく作るという高コストな方法でなく、
新しい手法を開発することで、製品バリエーションを大きく増やすというのは、とても正しい方針だと言えるでしょう。
勿論、ベルベット風素材が
トレンド的にも最も注目すべきものであることは言うまでもありませんね。

パーツについては、やはり、透明感のあるものを上手に展示されていました。同じ透明感のあるものでも、表面がつや消しになっているもの、素材が乳白色の半透明であるものなど、バリエーションも豊富に提案されています。しかも、新製品だけを集めるのではなく、トレンドにマッチした「これまでの定番商品」も上手に提案されているところに感心してしまいました。これは豊富な商品バリエーションを持つアイリスさんならでは、ですね。
ループチャーム(ループエンド)などスポーティーな服に使用されるアイテムには「カシオのG−SHOCK」などに代表されるような「
スケルトン」のイメージを持ったものも見受けられました。そういう点で、この春夏の附属アイテムは「透明感」をキーワードに、「エレガンス」から「カジュアル」、「スポーティー」まで、幅広いターゲットが存在すると言えます。他には豊富な「ZIP POINT」(ファスナースライダー飾り)の提案もありました。

また、トライアル製品ではありますが、水牛ナットのボタンで厚み高さのあるものが新鮮でした。天然素材に厚みを持たせるのは材料コスト的には高くなりがちですが、それをおぎなってあまりあるインパクトでした。

御田釦販売(株)

デジカメによる撮影を快く許可して下さいました。有り難う御座います
但し、製品の意匠の問題もありますので、製品自体は大写しにならないようにしてあります。

前回のプレテックスに比べてボタンの展示数が少ないように感じたのでうかがってみたところ、今後は自社で個展を開いていく方向でいらっしゃるようでした。テキスタイル中心の展示会よりも、訴えるものが明確な個展へ、という傾向なのでしょうか。

ボタンについては、やはり透明感のあるものに注目しました。厚みに、先シーズンよりもこなれた、ユニークなデザインのものがあり、興味をひかれました。この方向性のシリーズは「EASY」とタイトルされており、殆どのものがつや消しでした。透明ボタンはつや消しが、やはり、トレンドのようですね。
「ORIENTAL」とタイトルされたシリーズは
メッキボタン、またはメッキパーツとの組み合わせボタンが中心で、メッキもただのゴールドではなく、つや消しゴールド、スミ入れゴールド、アンティックゴールドなど、ニュアンスのあるメッキです。ただ、メッキが絡むボタンは、シーズン的な辛さもあるとしても、トレンド的には充分市場もある筈で、他のボタンを扱う企業からの提案が少ないのは、ちょっと「どうかな?」と思います。春夏でも、金糸、銀糸を使う生地もあります。そういう方向性のボタンを提案するところがもう少しあってもいいのではないでしょうか。

もう一つのポイントはストレッチテープです。他のブースでもかなり注目されているアイテムで、人だかりができていましたが、ここも人が最も集まっていたのはストレッチテープでした。撮影も人が離れるのを待たねばならず、ちょっと、大変でした。

清原(株)

こちらでは企画のチーフの方にじっくりとお話をうかがうことが出来ました。
(私は附属品業界全てに言えることだと思うのですが)清原さんでは過去、ボタンなどの商品に集中しすぎて、
モノ作り提案を怠ったことで、多くのチャンスを逃したという反省から、幅広い付属品を企画する方向に向かっているそうです。

商品はモノ作りだけではなく、それをどのように提案していくのかがポイントだということで、清原さんではこれから企画部門をデザインプロデュースに分ける方向だそうです。
実際、アイリスさんでも以前より意匠と全体的な企画に部門を分けておられるそうですし、やはり、付属品の企画というのは、デザインとプロデュースをそれぞれ充実しなければならないですね。

また、清原さんが、付属品の総合商社としての強みを持っておられる理由としては、情報の早さと、その情報に対する対応の早さと行動力にあるようです。年2回、ヨーロッパに(コレクションのシーズンに)調査に出かけられて、現地で良いモノを買い付けてこられるということもされています。
ここで清原さんの素晴らしいところは、ヨーロッパから日本に情報が流れて来て国内でトレンドとして動き始めるよりも
早く、確実にヒットする付属品を入手されていることにあります。国内でトレンドとなってしまったモノを扱うのは非常に容易なことですが、国内市場で評価されるモノを、市場より先に自らの目で集める実力は特筆に価すると言えます(私個人の見解ではありますが、付属品を見るこれほどの実力を持った人物は、おそらく、国内には他に2,3人もいないでしょう)。

といわけで、清原さんのブースは、かつて附属屋さんで企画をしていた私にとっては、本当に羨ましく、また悔しいものでした。幅広い付属品はボタン、テープ、スナップなどに留まらず、生地への各種の加工、スリップドレスなどに使うショルダーストラップ部分の提案、国内独占販売の新素材など、また、それらの商品提案のレベルの高さも非常に高く、ただメーカー商品のカタログ・サンプル帳を持ち歩くだけの付属屋さんとは大きく異なったものを打ち出しています。

具体的な商品としては、グッチ風の金属パーツ(ニット製品にボタンの替わりに使えるようなものです)や、パールやビーズで作られたショルダーストラップ、また、ラテックス製のシート生地(プラダの製品で使われているものだそうです)などが特に目をひきました。

(株)木馬

毎回、プレテックスでは人が多い木馬さんのブースですが、今回もやはり混んでました。テープ関係の附属は、ここ数年ストレッチが注目ですが、木馬さんでは、細目のものが目をひきます。ごく普通のストレッチループから、ブレードまで、3,4mm幅のものがあり、新鮮です。

ブースの通路側、非常に見やすいところでは、ヨーロッパ有名ブランドの製品で使用されたものが、実物とともに展示されていました。実に自慢げに見えるのですが(笑)、その反面羨ましくもあり、さすがに世界の木馬さんだな、という感じですね。
また、今回は、木馬さんの製品と企業を解説した
パンフレットがあり、木馬さんという企業、また、その製品を知る上で非常に効果的だと感じました。

大杉産業(株)

こちらも盛況でした。展示会でサンプルが入手できるのは、アパレルデザイナーさんにとっては非常に有用だということですね。

注目製品はやはり、ストレッチテープ類です。特にストレッチベルベットテープは色数も多く、定番商品は色数を抑えて染色対応している大杉さんとしては、注目すべきところです。在庫色を増やせるということは、市場の需要があることにほかなりませんね。また、非常に長いフリンジも目をひきました。


今回のレポートは、ちょっと、新しい試みに挑戦してみました。

一つめの試みは、ごらんになってわかるように、取材時に撮影したデジカメ画像の使用です。ファッション業界においてはビジュアルな情報というものは、時と場合によっては、知的所有権的な問題(多くの場合は権利の侵害という形で表面化している以上、モラルの問題なのですが)を内包していることもあり、詳細な情報をお届けできないという部分もありますが、会場の雰囲気は充分伝わっているのではないでしょうか?

最近のデジカ価格の割に高性能で、個人所有できるレベルのものでも、非常に良い画像が得られます。ビジュアルな情報がポイントとなるファッション業界において、インターネットで情報発信をする場合、注目すべきアイテムですね。

そして、もう一つは、今回は商品を中心にしたレポートだけではなく、展示会のあり方提案について企業の姿勢にも着目してみました。忙しい業界ビジネスマンのために、と始めたレポートではありますが、やはり、このような展示会は実際に見に行ってこそ、意味があると考えます。トレンド情報などは、そうして、実際に見た人たちの間でなされる情報交換の中から抽出されるべきですものね。そういう意味では、このレポートは情報交換のためのネタという程度の価値しかありません(無いよりはいいですよね:笑)。

しかし、(不思議なことに)展示会や提案そのものについての議論が殆どなされていない、という現状では、このようなレポートがもっとあってしかるべきではないでしょうか?レポートの中でも触れましたが、ボタンが売れていない現状でも、附属屋さんとして提案すべきものはいくらでもあるのです。コスト削減は決して悪いことではありませんが、アパレルデザイナーへの情報発信のチャンスをみすみす捨ててしまうのはどうでしょうか?

プレテックスに参加すべきだと断言しているわけではありません(参加企業が増えて欲しいのは本音ですが)。しかし、手芸関係の市場が低迷しているのにホビーショーが盛況なように、実際に商品を購入する立場にいる人達は、情報提案を強く求めているのも、また、事実です。プレテックスへの参加を見合わせている皆さんは、プレテックスで可能なレベル以上の提案を、果たして、しているのでしょうか?


註釈

デジカメ

デジタルカメラのことです。画像を、フィルムの替わりに、メモリーカードなどに電子データの形で保存します。プリントに出す必要がなくその場で画像を確認できる、即時にパソコンなどで画像を加工できる、撮影に失敗したときは、すぐにデータを削除できる、などの利点があります。現在のデジカメは性能の割に価格も手頃で、パソコンをお持ちの方は、普通のカメラよりもデジカメの方が便利かも知れませんね。

今回のレポートで使用した画像も、データ量を抑えるために、わざと、かなり画像を劣化させてありますが、それでもここまで映っているのです。

ちなみに、機種はフジフィルムの「Fine Pix 700」(借り物:笑)です。


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ホビーショーレポート

5月7日から9日の3日間、東京ビッグサイトにて’98日本ホビーショーが開催されました。

私は、去年、初めて見に行ったのですが、去年はソーイング関係のブースが多かったのに比べて、今年はクラフト色が濃いショーでした。非常に広い展示場に沢山のブースと沢山の来場者(おそらく、参加・来場とも、また記録を更新しています。)で全てを詳細に見ることは殆ど不可能でしたが、特に目に付いた部分に関してレポートします。


先ず、最初に目に付いたのがブラザー工業(株)のブースでした。ここでは「P’s電子カタログ」についての展示が注目です。洋裁を趣味とされる方にとっては、デザインを考えること、型紙を切ること、そして完成イメージを持つのはちょっとした苦労です。ところが、このシステムは、電子カタログ上でデザインを選択し、生地を選ぶと、メーカーからパターンをひいた状態で生地が届き、あとは切りぬいて縫うだけ、というシステムです。しかも、デザインと生地を選ぶと完成イメージをシュミレーションしてくれるというのが親切です。

アパレルメーカーさん向けには、株式会社ジュンP&E事業部さんや東洋紡さんが非常に高度なシステムを作られていますが、一般消費者を対象に、パソコンで実現できるシステムを作り上げているところが凄いですね。

会場でインフォメーションCD−ROMをいただいて、実際に試してみましたが、なかなか楽しいものです。

びっくりしたのはユザワヤさんのブース。会場内最大だったのではないでしょうか。人がいっぱいで歩くのも大変でした。幅広い商品構成と提案力はさすがです。

クロバー(株)さんのブースはやはり奇麗にまとまって、見ている人も多かったですね。手芸用品の幅広さは、附属屋さんにとっても助かるところです(附属屋さんは意外と手芸用品にお世話になるんですよ)。

前回うかがったときには総合カタログがもらえなかったのですが、今回はやっと入手できました。

手芸材料では、SHIPWRECK BEADSに注目しました。アメリカのビーズメーカーさんのようですが、色がとてもいいですね。国内で簡単に入手できるものでは、なかなか無い色です。また、ピューターのパーツもデザインがいいものが多く、興味深いものがありました。


今回は時間的な都合があったため、これ以上に詳しいレポートが書けないのですが、今回のホビーショーで非常に気になったポイントが幾つかありました。

先ず、第一に、参加、来場が非常に多いこと。

業界紙などを日頃から読んでいらっしゃる方は気づいていらっしゃると思いますが、手芸・ソーイング関係はここ数年、業界全体が低迷していると言われています。しかし、この来場者の多さは、非常に大規模な市場がちゃんと存在していることを示しています。

では、市場と、展示会場の違いとはなんでしょうか?

それは提案力の違いです。各参加企業のブースは、材料、用品の展示だけでなく、作品例の展示、簡単な講習を行って、隠れた需要を引き出す努力をされています。ところが(大手の手芸専門店を除いた)手芸店の店頭はどうでしょうか?材料を漫然と店頭に置いているだけでは、消費者の購買意欲を引き出すことは困難です。手芸店の皆さんは、手芸教室とのタイアップや、使用例の提案など、「欲しい気持ち」を呼び起こす努力が必要です。

第二に、展示されているものの。対象年齢が高いこと。

手芸を趣味とされている方の多くはご家庭にいらっしゃる主婦の皆さんが多いとは思います。実際に来場されていた方もそういう雰囲気の方が多かったと思います。しかし、昨年のインディアンビーズの大流行にあるように、トレンドに乗ると爆発的な市場を構成するのはトレンドに敏感な世代なのです。会場で見られた材料の持つ質感や色合いは非常に素晴らしいものが多かったと感じています。しかし、折角の商品クォリティもトレンドに敏感に反応した商品提案なくしては、宝の持ち腐れではないでしょうか?

第三に、ソーイング以外のブースが増えたこと。

これは、趣味の多様化のひとことでしょう。この状況で、ソーイング関係が他のクラフトに埋もれてしまうことがなければ、多様なホビーの展示会として、ホビーショーが市場に大きな相乗効果を及ぼすことが期待できます。

ホビーとは、本来、多様であるべきことだと思います。

そして第四に、キット商品が非常に増えたこと。

これに関しては、私は、若干の危惧を持っています。というのは、キットは商品提案の非常に効果的な手段である反面、作り手のクリエイティビティ・創造性が入り込む余地を狭くしてしまう一面もあるからです。

確かに、キットは提案力が具現化された究極の形ではあります。実際に、あるホビーについては初心者である人にも、入り口としての効果は非常に高いものが期待できます。しかし、ホビーの本来の姿はある種の芸術と同じように、それを楽しむ人にとっては表現の場でもある筈です。そのためには、ホビー商品はキットだけでなく、材料・用品の提案についてもきちっとなされていなくてはなりません。

しかしながら、会場においては、非常にキット商品が目立ち、材料・用品については少々お粗末ではないかという印象がありました。生産者、販売者はキットだけでなく、材料・用品の使い方が無限にあることも提示していかなくてはならないのではないでしょうか。

私たち「売るもの」を作る・扱う者にはある種の悪い癖があります。それは市場・消費者を固定的に捉えてしまうということです。それは極力避けなければならないことです。


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物流システムとボタン

現在、ファッション業界は史上希に見る不況にさらされています。

ボタンが使用されにくい現在のトレンドを顧みても、ボタン販売企業は少ないパイを奪い合う、シェアリングの時代だと言えるでしょう。

しかし、シェアリングのためには、同業他社にないノウハウを如何に早く蓄積し、応用するか、が、重要なポイントです。

事実、ボタンの販売戦略も、それが実現できているか、成功しているかはともかく、過去のようにセールストーク中心の営業から、マーケティング物流システム改革へと移り変わろうとしています。

しかし、それらの戦略転換は正しいのでしょうか?また、正しくないとすれば、何が正しいのでしょうか?

「傍目八目」という言葉があります。外部から見たボタン販売業界の戦略的行動を分析することで、内部では気づかれにくいポイントを明確化できるかも知れません。

芯地・裏地を扱っていらっしゃる、企業の戦略を考えてみましょう。


芯地・裏地は本来、大量生産設備があってこそ、商品として成立し得る部分があります。

それは即ち、大量在庫大量生産を前提とし、商品バリエーションはなるべく少なく在庫を大量に抱えることで価格は低く抑えられ、物流システムに乗りやすい、という商品の特徴になります。従って販売部門は商品知識の獲得に追われることも抑えられ、大手メーカーの生産設備の力で、商品のクォリティも安定しています。

また、使用感などの面はともかく、デザイントレンドによって受ける影響も少ないという利点もあり、ファッション業界のなかでは、奇跡的と言える程に効率的な商品であるとも言えるでしょう。
しかしながら、それだけに
同等商品どうしの価格競争は激しく、不況のファッション業界においてはかなり苦しくなってきているとも考えられます。

これは、あらゆる業界で、大量生産を前提とした商品に言えることですが、そのような商品は、企画力提案力よりも、価格競争力販売力がポイントとならざるを得ないという事実ゆえに至った状況です。
そこで、芯地・裏地を扱っていらっしゃる企業は、
ボタン販売に乗り出してきました。

そこには、ボタンなどのアクセサリー的付属品と芯地・裏地などの資材的付属品が、業界の中で「付属品」として一まとめに考えられているという実状も後押ししたと考えられます。しかし、実状はどのようになっているのでしょうか?

芯地・裏地を扱う企業は、基本的にボタンを含めたパック販売という基本路線をとっていらっしゃるようです。その多くはパック販売向け商品群の情報をサンプル帳のような形式で配布し、各地の支店に在庫オンラインに乗せることで、クィックデリバリー低価格化を実現しています。これらの商品群はボタンメーカー大量生産大量在庫少ない商品バリエーションで提供しているものであり、芯地・裏地などの商品と同じ物流システムに乗せやすい反面、価格競争が起きやすい、商品バリエーションが少ない、アパレルメーカーへ営業的に新規参入するための競争力に欠ける、大規模生産設備の確保が困難なため、自社生産による競争力を求められない、などの弱点があります。

従って、このような戦略は、一時的には、パック販売のための競争のアドバンテージにはなりますので、多くの芯地・裏地販売企業の参入は確実ですが、短期間のうちに価格・デリバリー以外には競争のポイントはなくなってしまいます。
しかしながら、販売の戦略的行動が可能な規模を持つこのような企業は、最終的には
営業力価格デリバリー取り引きの継続性)の強化によってこれらの問題をクリア出来ると思われます。

さて、ここで、このような状況が容易に推測できる現在、ボタンを中心に扱う企業はどのような戦略が効果的なのでしょうか?


芯地・裏地を扱う企業が乗り出すボタン販売に正面からバッティングする商品はリスクが高すぎます。

まず、第一に、クイックレスポンス(受注日即日発送)に対応すべき基盤がありません。クイックに対応するには、業務のオンライン化、各地の支店に取り扱う全ての商品の在庫大量にあること、が必須条件です。それらの条件をクリアするには、ボタン中心の販売企業では企業規模が小さすぎます。基盤整備のために投資すべき資本を捻出すべき資本規模がないのです。

第二に、価格競争についての条件が不利過ぎます。価格を低下させるには、大量生産(大量販売)、物流コスト削減、中間コスト削減(自社生産)などの実現が必要ですが、ボタン販売企業の多くは大量に商品をさばける取引先を恒常的に維持することは非常に希であり、また、企業規模の限界から効率的物流システムの構築は、ほぼ、不可能です。そして、自社生産については、現在のボタン販売企業の企画力、生産設備、在庫リスクの吸収力など、成長を見込んだにしても現実的ではありません。

そして第三に販路の拡大が非常に難しいことがあげられます。たとえば、ある大手アパレルメーカー大量生産のブランドを新規に立ちあげた場合、仕入先として優先すべき企業の特徴は、取引額が大きいこと(これまで、企業どうしの取り引き関係が長いこと=取引口座の有無)、物流の労働コスト(人件費)が抑えられることと納期が短いこと(物流システムの完成度)、価格が安いことと在庫が安定的に大量にあること及び品質が高いレベルで安定していること(大量生産製品=メーカー製品))などがあげられますが、ボタン販売企業では大手と取り引きが安定的にあるところは少なく、企業体質的に人件費は高く、物流システムの構築はほぼ、不可能、またメーカー的戦略行動が事実上取れない、など、芯地・裏地販売企業に有利ではあれ、ボタン販売企業に有利な要素は全く無いと考えられます。

さて、このように、同じボタン販売でも、芯地・裏地販売企業とボタン販売企業とでは、自ずから戦略が異なってしかるべきであります。つまり、「附属屋さん」とアパレルメーカーさんからはひとくくりに呼ばれる2種類の企業も、中心として販売するものの違いができた時点で、もはや住み分けは完成していたと考えるべきなのです。

では、ボタン販売企業が住むべきアジールはどこなのでしょうか?


ここまでこの文章を読んできた方には非常に簡単な問題ですね。

まず第一に、小ロット多品種なボタンを販売戦略の中心に据えること。

第二に企画提案力を競争力として、商品に付加価値を付けることで、価格の低下を防ぎ、人件費をカバーすること。

そして第三に物流システムの完成度が高すぎる取引先を選ばない、若しくは、ボタンの物流に関してのみ、独立したシステムの上に乗せて販売すること。

これらのポイントをクリアし、且つ、

効率が低すぎる現状のシステムを改善すること。

以上のようなことが実現できる販路が、ボタン屋さんのアジールではないでしょうか。


しかし、それでも、問題が一つ残ります。

芯地・裏地販売企業が、独立性の非常に高いボタン販売部門を設立した場合、それを迎え撃つ企業は事実上現れないと考えられます。なぜなら、芯地・裏地販売企業が、独立性の非常に高いボタン販売部門を設立するということは、非常に資本力のあるボタン販売企業が生まれることと、ほぼ、同じ意味合いを持ちます。しかも企業そのものの知名度信用度も高く、経営戦略的なノウハウの蓄積も比較にはなりません。

現在、芯地・裏地販売企業の経営者の皆さんはどのように考えておられるのでしょうか。


注釈

アジール(asile)

聖域、安全地帯という意味で使われることが多いようです。手元に資料がないので正確な訳語はちょっとわかりません。

ここでは、本来、いるべき安全な場所、というような意味ととらえて下さい。


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アウトソーシングについて

組織経営は軍事組織の運営と似ています。それは「経営とは戦いである。」などという教訓めいた無意味な言葉としてではなく、そのノウハウのあり方について、です。

近代経営学には、アメリカの軍隊組織のノウハウが応用されているという事実があります。財テク関連の知識として用いられるゲーム理論(あれ?パズル理論だったっけ?)などもそうです。また、指示命令責任権限に関するノウハウは、組織である以上、企業も軍隊も同じ部分があり、また、その重要性も同等であると言えるでしょう。


さて、アウトソーシングとはどういうことを指すのでしょうか?

私は、現在ここに専門的な資料を持ち合わせておりませんので、若干、不正確の謗りを覚悟の上で、この言葉を定義してみましょう。

アウトソーシングとは、組織の目的である業務の、ユニット化した特定の一部分を、「外部の専門的な組織」に委託することにより、「低コスト」で「ハイレベル」な結果を生むことを前提とした企業活動である、と私は考えています。


軍隊を組織するには非常に時間コスト金銭コストがかかります。

戦闘機パイロットの教育コスト最新鋭ジェット戦闘機の価格よりも遥かに高いと言われています。実際にジェット戦闘機に脱出装置がついていますが、軍事車両にはありませんし、歩兵が装備するボディアーマー(防弾チョッキのようなもの)は手榴弾の破片を食い止める程度の能力しかないそうです。これは、戦闘機パイロットの生還が軍事的に如何に重要か、ということの現われです。

新生国家(特に小国)が軍隊を組織する場合、傭兵を多く用いるのは、短期間に、ハイレベルな軍隊を組織する必要があるためです。そうしなければ、いつ、また他国が攻めてくるかもわかりません。

但し、傭兵部隊では部隊組織構築・維持のノウハウは国家に残せません。傭兵が戦死してしまえば、軍隊に必要なノウハウもまた失われてしまいます。また、国家の目的と、兵士の目的に差違があるため、命令実行の精度は決して高度にはなり得ませんね(高い目的意志は命令以上の結果を生み出す、というのは組織運営の常識ですね。)。

アウトソーシングとは傭兵を用いるようなものだとした場合、以上のようなことが言えるのではないでしょうか?


アウトソーシングは、短期間ハイレベルな結果を生み出しますが、ノウハウを企業に残し辛いという一面があります。また、意思疎通の精度の低さは、業務の最終的なレベルの限界でもあると言えるでしょう。

ビジネスマンは常に経営者的視点でビジネスを見つめるべきです。

ここで、個々の付属品営業マンが、自分のビジネス経営者的視点で見た場合、「生産」、「仕入れ」、「企画」という部門は、営業マンがアウトソーシングを行っているとも考えられます。

生産、仕入れ、企画を専門家に任せることで、時間コスト労働コストを抑えつつ、ハイレベルな販売活動を行うことができますが、その反面、営業の詰めの甘さと、ノウハウ蓄積の不足が起きる、という予測は否定できません。

これから、もっと高度化してゆくと考えられる取引先のニーズに、よりシビアに反応するには、生産、仕入れ、企画、販売、アフターケアに至るまでの一貫したノウハウが必要であると思われます。

アウトソーシングは決して悪いことではありません。状況によっては非常に大きな成果を生み出すものです。しかし、あらゆる技術がそうであるように、このノウハウも「諸刃の剣」としての一面を持っていることを忘れてはなりません。アウトソーシングを行うにせよ、組織自らの力で部署を作り、ノウハウを蓄積するにせよ、その利点を大きく伸ばし、その欠点を如何に補うか、という戦略無しに行動を起こすのは、組織の継続的な維持を損なうものだと認識すべきです。


注釈

組織の目的

組織の3要素とは、「目的」、「協働」、「伝達」であります。この3要素が無い「人の集まり」は組織の定義には当てはまらない、と組織論の専門書にはあります。

ちなみに、「経営者の目的」と「労働者の目的」は、「経済的視点」からすると、「企業の利潤」と「労働者の所得」という点で「利害の一致は決して有り得ない」というのも経済学の常識ですね。但し、「人間関係論」という「経営組織論的視点」からでは、必ずしもそうではない、という常識があることも付け加えておきましょう。

経済学で定義される「経済人」は「所得」が「労働の第一目的」なのです。しかし、「人間関係論」では「労働の目的」は、時に「所得を減らしても」ということが有り得ると言われています。ビジネスマンには実感ですねぇ。

余談ですが、人間が3人以上集まると「社会」がそこに存在する、という定義もあるそうです。

傭兵

エトランジェ(エトランゼはあまり正確な発音ではありません)」と呼ばれるフランス外人部隊は、フランスという国家にたいする忠誠心がその入隊条件の一つだそうです。ここには「組織の目的」を上層部から末端に至るまで統一しようという意思が感じられます。軍隊における「アウトソーシングの弊害」に対する一つの回答ですね。

ちなみに、「エトランジェ」の兵士は「戦場のロマン」をとても大事にする人が多いそうです。ビジネスマンも「ロマン」を忘れずにいたいものですね。

貴方は「ビジネスのロマン」を持って仕事をしてますか?それはどんな「ロマン」でしょうか。


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ヨーロッパコレクションの情報の扱い方について

久々の更新です(ごめんなさい:笑)。

住宅街には梅が咲いていたり、風に乗って沈丁花の香りが漂ってきたり。桜前線も北上を始めていますね。


アパレルメーカーではそろそろ秋冬ものの展示会が押し迫ってきていますね。ヨーロッパではコレクションも開かれ(ちょっと、前のハナシですね:笑)、業界ではコレクションセミナーがそろそろ開かれます。TV(テレビ東京)での「ファッション通信」でもヨーロッパコレクションのレポートが報告されます。

私も会社に勤めていたときは企画部におりましたから、コレクションセミナーにはよく出席しました。業界でもセミナーに出席される方も多いと思います。

けれども、セミナーに出席して、その後はどうされていますか?

デザイナーはデザインの方向を知る上で、当然重要なセミナーですが、それで全て完結するわけではありません。

まさか、セミナーに出席して、それだけで満足していたりはしないでしょうね?


ファッション情報は、決して、ヨーロッパコレクションが全てではありません。アパレルブランドでは、市場のトレンド、ブランドのシーズン毎の方針、価格帯、ターゲットの年齢層、そういったもろもろの情報を全て投入して商品を作り上げています。けれども、非常に重要視されているヨーロッパコレクション情報さえ使いこなせなくて、他のトレンド情報を使いこなすなんて絶対できませんよね?

コレクション情報たった一つにしても、それをきちんと理解し、分析し、自分達のビジネスにどのように生かせるかを検討し、作り手はその情報に沿った商品作りを、売り手はその情報に沿った提案をして、しかる後、次のシーズンの為に評価・考察をして初めて価値あるものになるのではないでしょうか。


私達が扱ってきたボタンは、服の形のトレンド、服地のトレンド、付属品のトレンド、ライフスタイル・価値観のトレンドなど、多種多様なトレンドの影響を大きく受けるものです。商品を扱う全てのビジネスマンがそれら全てのトレンドを理解してこそ、いいビジネスが出来るのです。

ボタンメーカーさんも当然、商品を作る過程でそれらの情報を中に含ませてはいます。しかし、これだけ市場が厳しい現状でもっとハイレベルな提案をするためには、付属屋さんがこれまでと同じレベルの行動をとっていたのでは、競争力の相対的な低下を招いてしまいます。

付属屋さんはボタンメーカーの商品を卸す過程で、そこに、取引先ブランドにあった提案情報という付加価値を上乗せして、そこで初めて付属屋さんの存在価値がうまれてくると考えるべきでしょう。

一つの付属屋さんが取り引きするブランドの数はどれくらいでしょうか?5?10?もっとでしょうか?それら多くのブランドは決して一つのターゲットを狙ったものではない筈です。営業マン自身が担当するブランドのターゲットを深く理解していることは当然の前提ですが、非常に多量のトレンド情報の中から、自分が担当する取り引き先に合う情報を選び出し、効果的に提案をしなければなりません。それは決して簡単なことではありません。営業マン自身が自分のビジネスを深く理解し、商品を深く理解していることを前提にして、その上でやらなければならないことなのですから、業界のことを深く理解されている方なら「そんなこと、出来る人なんているはずないよ」とおっしゃることでしょう。

実は全くそのとうりです、哀しいことに。

けれども、そういうことのために付属屋さん企画という部署が存在するのです。企画は大量のトレンド情報をエキスの状態に抽出し、それを再構築できるように構成しなおすのが仕事です(デザイン画を描くのが仕事じゃないんですよ。デザイン画の指示が正確に出来るのであれば、専門学校に通う学生さんにアルバイトでお願いした方が余程コストパフォーマンスが高いですものね。)。

シーズンの最初(ここでは、服のデザインの構想時期、付属品の選定時期と考えて下さい)に「今シーズンのトレンドは何だい?」と企画に行けば「あぁ、それならコレとコレですよ。」とサッと出てくる、これが本当の姿です。だた、実際にはそういう方法は非常に非効率的ですから、シーズンの最初に営業部と企画部が会議を開いて提案戦略を練って、しかる後に、各営業部で提案の戦術単位に咀嚼して営業マンに振り分けてあげるのが正しいですね。


今は、秋冬重衣料の商品の展示会が始まろうとしている時期です。それは即ち一年間の営業成績を決定付ける時期だということです。このHPを御覧になっている付属屋さん、皆さんの勤めるところではどうですか?提案戦略を練っていらっしゃいますか?今の時期を逃すと、一年間、無駄に過ごすことになります。

今シーズンのファッション業界が意味あるものでありますように。


と、いうわけで(何が「と、いうわけ」なんだろうなぁ:笑)

私もそろそろ退屈になってきております(笑)。こうしてHPを作ったり、ボタンメーカーさんの企画の方と今シーズンのサンプル帳について語ってみたりと、充実した時も過ごしてはおりますが、自らビジネスに参加する緊張感には及びません(良い緊張感は決してストレスにはなりません。満足感と心地よい睡眠を約束してくれるのです。:笑)。

私のHPを御覧になって私に興味のある方、私の方針に賛同して頂ける方、電子メールをお待ちしております。

このHPを御覧の皆様、DR.Kは就職先を探しております!!(笑:って、笑ってる場合じゃないか)

あぁ、就職したいなぁ。


付属屋さん:ここでは主にボタンメーカーさんからボタンなどの付属品を仕入れてアパレルメーカーさんに販売する企業を指しています。


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展示会レポート
'98 GRAND EXHIBITION
IRIS「総合展示会」

1月27日、28日
ラフォーレミュージアム六本木
(六本木ファーストビルB1F)
東京都港区六本木1−9−9


−MADE IN IRIS−
”過去×現在”、”自然×テクノロジー”、”カジュアル×エレガンス”など
異種や対極に位置する同士をクロス(交差)させることで、
そこに新しい”衝撃”と共に”未知の新しさ”が生まれると考えます。
'98年アイリスは「クロスインパクト」をキーワードに
新感覚、新表情、新テイストを提案します。

(招待状の文面より)


僕は、過去、ボタンをデザインしていた。それはボタン単独として成立する商品ではなく、洋服に付属して初めて価値を持つモノとしてのボタンである。

ボタンをデザインと言っても、画家の様に、自分の精神の内にあるものを表現するのではなく、取引先の意向、価格・デリバリー等の流通上の制限、生産に関する技術的制限の内で製品を作り上げ、そして販売のための方法論を組み上げようとすることだった。

おそらく、どの業界でもそうだろうとは思うのだが、一度、「商品を作る」ということを経験すると、他者が作った製品にも、製作者の意志が明確に読み取れてくるものだ。そして、ある時僕はその職を辞して、良きにつけ、悪しきにつけ、自由の身となった。その時の退職の理由など、意味を持つものではない。長い長い時間の後、振り返って、何かしらの歴史の流れのようなものの中にその意味を見つけることもあるだろうと考えていた。けれども、意外にも、今日、僕は退職の理由を知った様な気がしたのだ。僕は、「自分」が「デザインする」ことの限界を見ていたんじゃないだろうか、と。


さて、今回の展示会はアイリスとしては4年ぶりだそうで、この展示会に向けて力を注いだというお話の通り、単にボタンという商品の展示会という枠に収まらず、イタリアに次ぐ世界第2位のボタン生産国である日本の、業界最大手企業注1)である株式会社アイリスという企業の、方向性が見える展示会でありました。広い会場の中で、只、ボタンを奇麗に飾って並べる、という姑息とも言える手段は殆ど見られず、商品が「」について初めて意味があるということを明確に認識した展示方法は、業界のなかで「商品の提案」ということを再び考えさせるものがあります。

ボタンはどういう状態でよく見えるのが正しいのか。それはボタン単体で素晴らしく見えることでも、サンプル帳の上で素晴らしく見えることでも決してなく、「服」に付属して「良いボタン」であって始めて意味があることなのです。至極当然な話なのですが、意外と軽視されているのも事実です。


先ず、会場に入ってすぐに見えるのが、環境対策関連の展示です。

が展示されています。

現在、環境問題に対応した経済活動というのは、対応していない場合に比較して、コストパフォーマンスが低いという事実がありますが、リーディングカンパニーとしての責務と、規制が始まるであろう将来(あと10年も無いとは思いますが)を見据えてのアイリスの姿勢を感じます。

婦人服向けの商品提案としては、主に、

に分けられていました。

また、展示はそれだけではなく、

など、アイリスの技術力を示す展示、

等のアイリスとして取り扱う商品の数々

という企業としての活動、

等々、アイリスという企業の幅広さを感じます。


注目したい個々の商品をレポートしたいところなのですが、あまりの多さにとてもメモをとれるような状態ではありませんでしたので、デザインの方法論的な見地で報告します。

繊維ボタン

非常に大まかな分類なのですが、くるみボタンコードボタンベルベットボタンです。一般に繊維を使用したボタンは生地、服地とのマッチングが良く、大きな流行り廃りが無く、安定した定番商品ですが、それだけにデザイン性に制限が多いという一面を持ちます。しかし、アイリスでは、変形のくるみボタンや、ポリエステル素材との組み合わせ、ハトメ穴ボタンなど、既存の技術、ちょっと高度な技術、そしてデザインのアイデアで、多くのバリエーションを作っています。

メッキボタン

やはり、今シーズンの注目はアンティック系のメッキですね。「王朝風」のデザインが注目されてゴールドボタンが注目されていますが、単なるゴールドはトレンドではありません。アンティックゴールドやつや消しゴールド、スミ入りゴールド、アンティックシルバー(アンティックニッケルじゃないところに注意)、アンティックカッパー(銅古美ですね)、など、「ちょっと違うメッキ」「ニュアンスのあるゴールド」が注目です。アイリスでは単なるメッキボタンに留まらず、ゴールドのガラスビーズを使ったボタンなども提案していて、トレンドを強く打ち出しています(注12)。

ポリエステルボタン

先ずはシンプルなデザインのボタンなのですが、アイリスの本領発揮というところでしょうか、決して奇抜なデザインではないのですが、ちょっとしたデザイン上の工夫で「他とは違う」というところを表現し、しかも使いにくくならない工夫がちゃんと考えられています。それは単に形状のみの問題ではなく、素材の柄に至るまで、深く考えられていますね。

私が注目したのはラメやパールエッセンスなどの「」を反射する材料を水牛調の材料に混ぜたポリエステル素材ですね。確かに光が目を引くのですが、決してギラギラしていないところが面白い商品です。また、透明素材を使ったボタンも注目しました。ボタンの表と裏の両方に模様を入れることで、レースのレイヤー使いのような立体感奥行き感を出すというテクニックはデザインアイデアの勝利ですね。それから、多層のポリエステルの板材カット工夫で面白く見せているボタンも、生産に関する知識がある人がデザインしていることが明確にわかりますね。

ラクトボタン

レースのブームに合わせて、透かし模様のボタンを幾つか提案されていました。綿レースに合いますね。

コートボタン

アイテム別商品提案というのは、商品を提案する上で最も効率的な方法ですね。アイリスのコートボタンは、ただ大きい、厚いというわけではなく、ちょっとしたデザインの工夫がありながらも使いにくくないというところがいいですね。

ロゴ入りボタン

ブランドネームを入れたボタンというのは別注商品の基本でもありますが、アイリスでは単に彫刻でブランドネームを入れるだけでなく、そこに染色や切削、そしてもっと高度な技術を組み合わせて、ロゴ入りボタンのバリエーションを大きく広げました。中にはデザイナーとしての目で見て「あ、この方法があったのか、しまったぁ!」というのもありました。デザインというのはアイデアなんだと実感させられます。

陶器風ボタン「touki」

陶器の釉のような塗装を施したボタンです。先のPRE−TEXでは清原(株)にもそのような商品がありましたね。アイリスのボタンは染色に対応しているのでしょうか?一般に陶器風のボタンは主張が強く使いにくいようですが、一度気に入ったアパレルさんは続けて使うそうですね。

以上が、今回のIRIS総合展の主なポイントです。もっと詳細にレポートしたいところなのですがあれだけの商品を全て網羅することはほぼ、不可能と思われますので、ご容赦下さい。

尚、先のPRE−TEXJAPAN CREATION '98等の生地、繊維関係の展示会と合わせて今回の総合展を御覧になった方は、非常にトレンドが把握しやすかったのでは、と思います。

会場を出るときにアンケートを提出して記念品を頂きました。足のむくみを抑えるソックスでしたね。きちんと男性用、女性用とわけていらっしゃいました。以前、IRIS総合展で記念品を頂いたときは、箱の中にシルクの女性用下着が入っていて、ほとほと困りました(笑)。


ボタンのデザイン、その中には、洋服のトレンド、生地とのマッチング、ボタンデザインのトレンド、アパレルデザイナーの要望を汲み取る情報力、企業の技術力、生産・販売力、企画部門の提案力、デザインの意図を伝える販売部門の情報流通力、そして、デザイン部門のデザイン・アイデア力など、非常に多くの要素が含まれていると、僕は考える。

今日、僕はそういう視点での自分個人の限界というものを改めて思い知らされたのだと、思う。

けれど、戦争に負けてからが職業軍人の生き方であるように、絶望して初めて、絶望の中ですべき事が見えてくるものだとも、思う。僕達、服飾付属品に携わる者は、今は決して諦めていい時期ではない筈だ。


昔は、服のボタンを決める際はボタン屋さんが「この服にはこのボタンですよ」と決めていたそうです。しかし、後に日本のアパレル企業がデザインを重視し始め、アパレルデザイナーがボタンのデザインも重要視するようになって、ボタンを決める主導権はアパレルデザイナーへと移りました。ちょうど、その頃の日本は高度成長期から(石油ショックを間にはさみますが、石油ショックそのものはファッション業界にとって意外と危機ではなかったそうですね。)安定成長期、バブル経済へと移り変わり、ボタンを販売する側にとって、販売のノウハウは主にセールストークであったようです。

しかし、バブル崩壊の後、経済が停滞して、アパレル商品の売れ行きが落ち込み、アパレルデザイナーが商品のデザインに悩み、ボタンの選択に悩んでいる現在、ボタン販売のノウハウは、セールストークだけでは何の役にも立ちません。ところが、今、現在、販売に携わる営業マンが販売のノウハウを教わろうにも、教えるべき世代の人々にとってははセールストークが唯一のノウハウでしかないのです(数々の反論もあろうかと思いますが、私は、具体的に「私の販売のノウハウはこれだ」と言えるものを多く持っている営業マンに殆ど会ったことがありません。)。

この現状はボタンを「作っている」人々にとっては絶望的とも言える状況でしょう。そして、その結果が今回のアイリス総合展に結実したのではないでしょうか。服飾付属品卸業者を通じて情報が流通しない以上、情報を直接ユーザーと流通させようとするのは当然の帰結です。

今回の展示会には付属卸業者としてやるべきであったことが「これでもか」というほどに提示されていました。私は「あぁ、やっぱり我々はこうしなければいけなかったんだ。」と、絶望にさえ近い感慨を持ちました。

もし、このような状態を黙って見ているのであれば、ボタンという商品が付属卸業者を通る意味が無くなってしまうのでないでしょうか。一般に商品の流通過程で、中間業者が消えていくのは他の業界で証明されているように、メーカーと消費者にとっての意向となりつつあります。それが良いことか悪いことかに関わらず、我々はそういう現状を認識し、何らかの対応をしなければならない時期に来ているのです。

1月28日


注釈

注1
企業所得などでは、必ずしも業界トップではないのですが、総合的に見てアイリスを凌駕出来る業界企業は無いでしょう。法人所得ランキングでは、私の知る付属業界企業では
スコービル・ジャパン(3022位)三景(5261位)日東ボタン(6087位)がアイリス(7628位)を上回り、吉岡(9955位)などが高いレベルで追随しています。
(1997年版法人申告所得ランキングより)

注2
ウール素材は漂白に薬品を使用するのですが、その揮発性成分がメッキを侵食するのです。しかも、検針器対応メッキと言うのは下地メッキにニッケルを使用できないため、表面が滑らかになりにくく、それだけ耐食性が劣る場合が多いのです。

注3
真ん丸のくるみボタンで、昔の手で生地を纏って作っていたくるみボタンにそっくりで、とても可愛い商品です。
品番:WO−10

注4
樹脂製
スナップボタンですね、幅広いデザインがあり、樹脂製ということで価格的にも扱い易いのではないでしょうか。スポーツ・カジュアルには注目していい商品ですね。

注5
ウッド単体のカフスがすごくいいですね。スーツ用ボタンや凝った高級ブレザーボタン、ピューター(錫)ボタン、金モールのエンブレムなども。

注6
試作商品のことです。トライアルとして展示し、反応を見て製品化することもあります。非常に凝ったボタンや、透明素材を上手に使ったボタン、本七宝のボタンもありました。

注7
アクリルの写真立てやスタンプ、畜光材を使用したアクセサリー、何とウッドのマウスまでありました。東京ディズニーランドのグッズを作っていると聞いたこともあります。

注8
試験に挑戦している皆さん、頑張りましょう!アイリスでは
受験のサポート体制を組まれているそうです。

注9
この2年ほどですごく
注目されていますね。今やサービス業系企業でも取得するところが出ています。しかし、ISO取得というのは非常に難しいとも聞いたことがあります。

注10
アイリスのボタンの
総合索引です。アイリスは非常に商品が多く、その検索にはいつも苦労しました。I・DEXが出版されて、便利にはなりましたが、印刷メディアは検索性があまり高くありません。いつかは出るだろうと思っていましたが、ついにデータ化したんですね。電子データ化することで、検索性がすごく向上することでしょう。ボクも欲しいなぁ(笑)。

注11
50年代のシャネルスーツや帝国海軍の制服など、
資料価値も十分。ホームページは要チェック。でも、実際に博物館に行った方がいいですね。

注12
我々もそうなのですが、ゴールドボタンが広まって欲しい、という意図もあるのでしょうね。


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展示会緊急レポート
総合テキスタイル見本市
JAPAN CREATION ’98

1998年1月21〜23日
東京国際展示場「
東京ビッグサイト」にて。

このHPからのリンク先の一つである東京ファッションデザイナー協議会CFD)のHP上でアンケートに答えたところ、読者プレゼント(こういう表現でいいのでしょうか?)に当選し、今回の展示会の招待状を頂きました。

私の専門分野はボタンを中心とした服飾付属品なのですが、ボタンが服に着くものである以上、生地のトレンドは見逃せません。こういう機会は決して多くはありませんから、ここはひとつ、と出かけてきました。


新橋から「ゆりかもめ」に揺られて25分、ビッグサイトの西ホールを使って開催されるこの見本市はさすがテキスタイル業界、大変な規模でした。総合コンセプトの展示スペース、テキスタイルデザインコンテスト200を超える各展示ブースと、全てを見てまわると3時間くらいでは済みません。私は足が痛くなってしまいました(笑)。カフェテリア、休憩所、商談スペースなど、座れるスペースが多いのもうなづけます。

今回は懐に余裕が無く(だって、お仕事してないんですから:笑)、セミナーの受講とトレンドブック(欲しかったんですが:¥10,000でした)の購入は見送ったのですが、見て歩くだけでも十分価値のある展示会でした。

エリアはシルク・化合繊ウールコットン情報編みレース染色整理ニットタオル撚糸資材・服飾総合、とアルファベットのAからKまでに分けられており、テキスタイル業界らしい分類です。

テキスタイルそのものについては企業数も多数で、各社の展示ブースでご説明を伺う時間的余裕も無く、総合コンセプトテキスタイルデザインコンテストJ.T.F.(JAPAN TEXTILE FRANKLY TALKING GROUP:ジャパンテキスタイル懇話会)の展示ブースでトレンドを測るにとどまりました。

トレンド的には、やはり前回のプレテックスのレポートの内容と重複すると思われる部分が多く、生地の「透け感」「立体感」「グリッター感」「起毛」というところがポイントです。但し、以前のように、それらの要素が独立してテキスタイルの要素となっているだけではなく、要素の複合化とも言うべき部分が見られ、生地のバリエーションを大きく広げている感覚があります。
これまでは、

と一つの生地に一つの特徴、とも言えるところがあったのですが、今回の見本市ではそれらの技術を一つの生地に組み合わせて使う、というものが目立ちました。しかも、「立体感」の手法として「絞り」の技術を使ったもの、「透け感」の表現に、穴あけ(と言うより切り抜きに近いですね)、「グリッター感」の表現に、艶のある樹脂を生地に付着させるなど、比較的新しい技術も加わり、非常に選択肢が広くなってきています。また、技術を複合させるために、個々の風合いを若干抑えて、生地が派手になりすぎないような工夫もされています。基本的には、織り、編み、縮み、立体感、光沢、透け感という技術は既存のものではありますが、その進化と複合がテキスタイルのトレンドとなりつつあるようです。

ただ、テキスタイルの方向性は、間違いなく「ロマンティック」へと向いており、トレンドの大きな流れは変わっていません。私のように服飾付属品を扱う目で見ると、複合技術によって主張の強い生地に「かちあう」ことなく、しかも「埋もれる」ことのない、付属品という難しさを感じます。

柄・模様についても、大きな流れを継続させており、王朝(ヨーロッパの王朝とは限らない、と感じました)風の模様、色使いが感じられます。具体的にはアラベスク模様、花柄ジャガード(チロルテープ、ジャガードテープという形で展示されていましたが、金糸を使って日本、東洋の王朝をイメージさせるものがありました)などです。

色については、実は意外なことに赤が少なかったのが驚きでした。白からベージュにかけてを中心に、ニュアンスのあるモノトーン系ワイン・パープル(強いて言えば赤系ではありますが予測されていた金赤ではありませんね)に比重がかかっています。しかしながら王朝風な色の使い方をしている、という点では付属品などのトレンドの方向性は変わらないでしょう(但し、商品の提案の際に使う色には注意が必要ですね)。

J.T.F.ではトレンドコンセプトをはっきりと打ち出しており、「装飾性」「簡素性」を具体化する色として「白」を挙げていました。展示ブースでは白からオフホワイト等のニュアンスのある生地にゴールド(ちょっとくすんでいたりと、こちらもニュアンスを持たせています)を強く打ち出しています。また、茶系がトーンダウンし、ワイン・パープル・ゴールドに注目しています。テキスタイルとしては98年秋冬には、オパール・フロッキー加工ベロア、ベルベット生地ウール・化合繊ニット(カットソー)に注目しています。実際展示ブースはウール・化合繊、が非常に多く、ニット、ラッセルレースなどの技術を応用した生地が目に付きました。

今回の生地のトレンドが定着し、付属品などにもきちんと影響すれば、これからのアパレルには非常に価値感のある製品が出て、業界が活性化するのではないかと思います。


この見本市の非常に大きもう一つのポイントはやはり、 TIIP(若しくはTI+IP:Textile Industry Innovation Program:繊維産業革新基盤整備事業:簡単には繊維業界のQR化計画ととられられていますね)でしょう。ある部分では、ほぼ完成を見ている部分もあるようで、コンピュータ、ソフトウェア、情報、システム関連の企業が展示ブースを連ね、非常に丁寧な説明をされていました。

一つ、私個人として気にかかるのが、通産省の話(以前、繊研新聞などで読んだ程度ですが)では、主に対象とされているのが、繊維業界アパレル業界芯地・裏地などの服飾資材の業界であり、私達の付属品(この場合はボタンなどを指していますが)を対象としていない、ということであります。詳しくお話を伺ったところ、殆どの場合、システム開発はアパレル企業と共に行われるのですがその過程で「付属品も」という要望があっても、その商品管理の細かさに限界があったということでした。

しかし、現在、通信規格、データフォーマットなどが整備され、公開が始まっている以上、何らかの形で研究・開発を始めないことには、流通などの回転速度が上がってゆくファッション業界の中で、付属品業界がボトルネックとなりかねない危険性をも孕んでいると思われます。

ただ、一条の光としては、インターネットの技術を利用する、という方向性があり、この規格は構造が簡単で、しかも完全に公開されているという点で、まだ、「間に合う」とも言えるでしょう。

実は各展示ブースの詳しいレポートをしたかったのですが、いかんせん、ボタンを中心に扱っていた私はTIIPの全容を理解することができず、概要に留まってしまいました。もっと勉強して、また、このページに書いてゆきたいと思います。


私の注目ブース

御田釦販売(株)

PRETEXに続いて今回もしっかり展示してらっしゃいました。若干トレンドに合わせて展示のしかたも変更されたのでしょうか、王朝風の釦が目に付きました。今回も写真カタログを配布されていましたね。スペースも大きく取っていらっしゃいました。テキスタイルの見本市とは言え、アパレル関係の方もかなり来られていたと思われ、数少ない服飾付属品のブースはその価値が高いと言えます。

宝本商事(株)

こういう展示会への出展は始めてというお話でしたが、サテンリボンのパーツを提案されていて、意欲的です。リボンパーツは付属品卸業者が加工して出荷している場合が殆どなのですが、こういう企画は非常に意義があると思います。シルクのサテンリボンを始められるそうで、新しい商品に期待がかかります。サテンリボンを編んで作った製品を提案されていて、興味深いものがありました。

(株)東京宝来社

マーキングを中心にした企業です。カラーコピー機で作る熱転写シートを展示されていました。興味深かったのはフロッキー転写マークで、先染めのナイロンフロッキーを使用しているため、堅牢度が高く、起毛が丈夫で高さがあるということでした。カジュアル、スポーツ系に用途が広いと思われます。

太平洋貿易(株)・太平洋ミンク(株)

ミンクを中心とした毛皮使用の衣料を販売されているそうですが、付属としても扱われているそうです。ミンクのフリンジ加工など、面白い使い方をされていました。

大東紡織(株)

E−WOOLKaroolの展示をされていました。
E−WOOLというのはウールの縮絨を防ぐためにスケール(キューティクルみたいなものでしょうね、これは)を取る際に塩素を使用せず、ホルマリンが0ppmという繊維で、係りの方が非常に丁寧な説明をして下さいました。アンケートに答えてウールの包帯を頂いちゃいました(笑)。手触りが軟らかでしたよ。
KaroolというのはウールとPVAを混紡した後、PVAを溶かして繊維の間に空間をつくって、軽く、柔らかい繊維を作った(と説明書に:笑)ということでした。

伊藤忠インターネット(株)

バーチャル展示会システムを紹介されていました。でも私が興味を惹かれたのは伊藤忠グループのCTCクリエイト株式会社ホスティングサービスです。一般のプロバイダよりも一歩深いサービス、という感じでしょうか。企業でサイトを開設するには非常に良い方法ですね。中途半端に料金の高いプロバイダにサイトを開設するより、ずっと効果的で安いですね。伊藤忠インターネットのサービスと組み合わせると、バーチャルショッピングモールまで作れてしまいます(ここまでやるとそれなりの費用ですが:笑)。

東洋紡績(株)

仮想の生地を画面上で再現し、そのドレープまでシミュレーションするシステムを紹介していました。(株)JUN・P&E事業部の4DBOXを別系統に進化させたような感じを受けました。3D画像は思わず見入ってしまいます。余談ですがシリコングラフィックスのマシンが置いてありました(初めて実物を見ました:笑)。

キャノン販売(株)

TIIP関連(POS)のシステムを紹介されていました。市販のノートパソコンを中に接続(ビルトインという感じですね)して使うシステムが興味深いものがありました。ハードウェアやソフトウェアが既存のものが使えるというのは運用性が高いという点で注目に値すると思います。TIIPについての説明が非常に丁寧でした。

本当はTIIP関連の全ての展示ブースについてご紹介したいのですが、私の勉強不足でコメントできない部分ばかりですみません。どの展示ブースも、既存のハードウェア、OSを基盤に、SPA支援POSシステムを構成していて、繊維業界への導入はもう始まっているんだな、という実感がありました。今、このページを御覧になっている皆さんが持っているパソコンやインターネットの知識は、充分TIIPの運用に役立つことでしょう。


まとめ

この見本市は、単に繊維メーカーが出展しているというだけではなく、各生産地の団体、コンピュータ関連企業などが参加されており、繊維業界に対する意欲を感じました。

また、ガイドブックも非常に内容が濃く、繊維関連企業データベースとしても価値あるものになっています。

最後に、どの展示ブースの方も非常に丁寧な説明をして頂き、誠に有り難う御座いました。

1998/01/24


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アクリルボタンにまつわるエピソード

アクリルというのは、「素材について」で解説しているように、扱いに若干の注意が必要な素材です。

ボタンは衣服に付属し、「留め具」として機能する以上、その使用条件は一般の工業製品よりも過酷であることも多く、そういう点では明らかにデメリットではあります。

しかし、その透明度、インジェクションによる生産方法、染色が可能であること、ポリエステルのように黄色く変色しないことなど、当然ながらメリットもあるのです。

あらゆる素材にはメリットとデメリットが存在し、使用目的、状況に合わせてそれらの素材の中から製品に適したモノを選ぶのが本来あるべき工業製品の姿です。

しかし、現在ファッション業界におけるアクリル素材のボタンの使用状況は如何なものでしょうか。

実際は「取り扱いが難しい」「トラブルが恐い」そういう理由で営業活動の場から追いやられてはいませんか?メーカーではきちんと企画され、生産もされているのに、です。

ボタンの素材は、ラクトポリナイロン金属ABS水牛ナット、たったこれだけでは決してありません。しかも、どの素材にもあるメリット、デメリットは、その程度に大きな差があるものではないのです。

では何故、アクリルボタンがそういう酷い扱いを受けているのでしょう?

ボタンを販売する皆さんは、ここで考えてみて下さい。

洗濯表示を変更してもらうための理由、衣服の保存に関する注意、アクリル素材のメリット、それらはアパレルメーカーのデザイナー、生産部門、営業部門、消費者、クリーニング業者に伝わっているでしょうか?

残念ながらここで自信を持って「YES!!」と答えられる方は何人もいらっしゃらないでしょう。

(もし、貴方が「YES!!」と答えられたのなら、貴方はこの業界を支える人物の一人になれるでしょう。)

それは貴方一人が悪いということでは決してありません。けれども、貴方に責任が全く無いとも決して言えないのです。

ボタンの素材としてのアクリルは他に比べて歴史の浅い素材だということもあります。しかし、後発の素材は、それまでの素材になかった風合いを実現するために開発された筈です。そのメリット、デメリットのアナウンスは、それまでの素材の場合以上に徹底して行われるべきです。

販売営業マン一人の問題ではなく、生産企業、販売企業が全社をあげて、いや、業界のあらゆる人々がアナウンスに参加しなくてはならない筈です。

アクリルボタンに関わる業界の怠慢(敢えてここではこう言いましょう)のために、その対価を支払ってくれる消費者が、ファッションアイテムの一つ、お洒落の選択肢の一つを、確実に、そして永遠に失うことは、勿体無いというだけでなく、実に愚かなことだと思いませんか?

実は、アクリルボタンというのは、私たちが働いてきた(そしてこれからも働き続けるであろう)この業界の現状を象徴する一つの事実に過ぎません。私たち、業界人の怠慢で、こうして失ってきた「もの」、「そこで働いていた人々のノウハウ」はもっともっと、沢山あった筈です。

失ったものを取り戻すのは容易なことではありません、しかし「失いつつあるもの」を「残す」ことは決して困難ではない筈です。

1998/01/20


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の関係

雪もようやく一段落、道路のわきに少し残るのみとなりましたね。
今年はエルニーニョ現象の影響もあって東京は雪の当たり年だそうです。

テレビでは雪が積もっていたり、凍ってしまった道路で、転ぶ人達の姿が映っていました。

私は大学時代、新潟にいましたから、さすがに雪は慣れっこ(とは言っても、入学した年は、はしゃいで雪合戦をしたり、滑って転んだりと大変でしたが:笑)なんですが、テレビでは「雪道で転ばない歩き方」なんて放送していて、ちょっとしたカルチャーショックでした。

なにせ、出身の大阪では雪が積もることは殆ど無く、(極々、希に雪が1cm積もると交通は壊滅的な大混乱になったくらいですから)テレビで「雪道の歩き方」というのはとても不思議なものなのです。

足の裏全体に体重をかけ、若干、膝を曲げて、歩幅を小さく」なんていうのがその内容だったみたいですが、世の中の忙しい人達がそんな悠長な歩き方をしていられるものかなぁ、とも、思ったりします。第一、会社勤めをしている人がはいている靴は裏がつるつるなんですから、そういう歩き方をしても、無理がありますね。それに、膝を曲げて歩くのは格好も良くないし、腰が疲れそう(笑)。

新潟で冬に靴を買いに行くと、裏側にきちんと滑り止めの模様をつけたものが売っていますね。デザインがシンプルなものなら、何年も「はきまわし」がきくでしょうから、都内でも販売して欲しいですね。

私は、東京で大雪に出遭ったとき、「秘密兵器」を使いました。実は米軍のサープラス(放出品)で手に入れた軍用のブーツ(フィールドブーツというやつで、冬用というわけではありません)をはいて出勤しました。この軍靴、底が分厚くて、大きなブロックパターンが組まれており、半分アイスバーンと化した雪面にもきっちり噛んでくれます。これなら大股で歩いても、全力疾走(危険ですから、マネしないで下さいね)しても大丈夫でした。しかも底の厚みで足が冷たくならないし、足首までカバーされるから、雪も靴の中には入ってきません。但し、スラックスの裾で少々隠れても、カジュアルなイメージは避けられませんね。まぁ、ゴムの長靴とどちらを選ぶか、というところでしょうか。

ただ、一つ気になったのが、最近流行のハイテクスニーカー(もはや流行ではなくて、今はローテクスニーカーという話もよく聞きますが)です。底が分厚く、しかも大きなブロックパターン。その効果はどうだったのでしょうか。でも、プレミアもののスニーカーを雪道ではこう、なんて人、いないですかね(笑)。

あ、それから。完全に凍った路面は、金属のスパイクがついたような靴でないと、絶対すべりますから、どんな靴も過信は禁物。

1998/01/19


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謹んで新年の御慶びを申し上げます。

本年もDr.Kのプチ・ファッションを宜しく御願い致します。

1998/01/03


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クリスマスパーティー

おりしも街は クリスマス 一色、というわけで、このページでもちょっと クリスマス っぽい話題を。


12月ともなれば忘年会、いやいや、クリスマスパーティー華やかなりし頃ですね。 みなさんもパーティーに出席される機会が一年の中で一番多い頃ではないでしょうか (そういえば、最近パーティーらしいところには出てないなぁ)。

そこで意外と困るのが衣装(え?困りません?うらやましい(笑))。 ブラックスーツにブラックタイ着用のこと、なんていうのはまだいいんです。 みんながそういう服装なんですから。

問題は「ちょっとだけお洒落したいな」っていう場合じゃありませんか? 男性の場合、つい、一張羅のスーツですましてしまうんですよね。 「一張羅なものだから、それ以上の衣装は持ってないし、困ったなぁ。」となってしまうわけです。

一人暮らしの新人ビジネスマンなんて特につらいところです。

そこで、まず、皆さんは を磨きましょう。黒い靴で、タッセルなんかの飾りっ氣のあるやつがいいですね。 靴下は白や透けるやつは避けましょう。で、 ネクタイ はいつもよりちょっと柄があるやつなんかを引っ張り出してきて (蝶タイがあればなおいいですね)、胸のポケットから白い チーフ なんかを出してもいいですね。

それでもなんかさびしいという人は、 襟にピン を飾るのはどうでしょうか。 こういうときは男性のアクセサリー(小さ目なら)というのもいいと思います。

色は全身で 3色 に抑えましょう。そうするとまとまりよく見えます。 ちなみに黒白、金銀は色の数には数えません(色彩関係の書籍にはそうありました(笑))。


さて、問題はここからです。このままではいかにも一張羅、 「馬子にも衣装」状態です。

そこで立ち方、歩き方を変えましょう。

直立して、 肩を下に 引っ張るように意識すると首がまっすぐ伸びて長く見えます。そのまま、 みぞおちのあたりを真上 に引っ張るようにすると、お腹がへっこみます。

「胸を張りましょう」というと、つい、お腹を出して弓なりになってしまいますが、 これはお腹は出るし、お尻は出るし、でみっともなくなってしまいます。

歩くときは ひざ を伸ばして、 男性はかかと から、 女性は足の甲 から歩くようにしましょう。

これで、大体、身長にして 5cm くらいは違って見えます(本当ですってば)。 というよりは、スタイルが良く見えるようになるんですね。

え?「そんなことをしてたら肩が凝る」?そりゃ慣れなきゃ凝ります(笑)。 でも、たった一晩のパーティーじゃないですか、こういう努力もいいと思いません?

1997/12/21


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「PRE−TEX45」

PRE−TEX45」
12月9,10日
東京都大田区平和島6-1-1
(株)東京流通センター(Phone:03-3767-2190 Faximile:03-3767-2053)
にて開催


プレテックス テキスタイル の企業が中心になってこれからのトレンドに沿った商品群を提案 ・展示する場です。生地というのはヨーロッパでもそうなのですが、コレクションよりも 1シーズン先立って 動きます(パリコレよりもヨーロッパの生地の展示会の方が 半年早く開催されるのです)。 従って、アパレル企業のデザイナーの皆さんも 新商品とトレンドの情報を収集に大勢来られるのです。
また、プレテックスは特別に招待券が必要なわけではなく、 ファッション関係の学校に通われる学生さんや、 ボタン、アクセサリー、服飾附属品、雑貨など、 ファッショントレンドに関連のある企業に勤めていらっしゃる方々など 色々な方が来られています。
服におけるトレンドに関して言えば、スタイルと生地が基本である以上、 服そのもののトレンド情報のかなりの部分がここにあると言っても過言ではありません。
ボタンなどの附属品を扱う皆様も(いや、附属品が服に付くものである以上、「扱うからこそ」)、 是非、行かれる事をおすすめします(とは言っても、既に終わったあとですね)。


さて、私は、もと、「附属屋さん」なので、このプレテックスについては 附属品関係を中心にお話したいと思います。

今回のプレテックスでは久々に服がゴージャスに(笑)変わってきたな、 という感覚がありました。 エブリデイクローズに対する反動のようなことはこの2.3シーズン、 言葉にされてきてはいたのですが、やっと形になってきました。
コンセプトルームでは様々な生地を
「魅了せる」 「未来せる」 というテーマ(みせる、とルビをふってました)にわけて展示してあり、 中でも私は「魅了せる」の方にこれからのシーズンの流れの変化を感じ取りました。
附属品業界にとって服がシンプルであるか、ゴージャスであるかは、 実は結構シビアな問題で、シンプルな服は殆ど附属品が付かない、 つまりお仕事にならない、ということです。 そういう中、今シーズンのプレテックスはヨーロッパのトレンド
「ロマンティック」 の路線をきちんと捉えていて、頼もしい限りです。

「魅了せる」と題されたコーナーで展示されていた生地は 赤系統 の色が中心となり、そこに若干 くすんだような金色 を思わせるプリント、刺繍、附属品をあわせて提案していました。
これはヨーロッパの
王朝 のようなイメージを中心にしていると思われ、「赤」もただの赤ではなく、 若干朱色っぽい赤からくすんだ赤、臙脂(うわ、難しい漢字。えんじ色ですね)、 ワインレッドあたりの 「ニュアンスのある赤」 です。
そこにあわせる金色もただインゴットのようにつるっとした金色ではなく、 長い時間を経てくすんだ金色を思わせる色合いです (生地へのプリントならともかく、 ボタンなどの附属品ではメッキの技術がものをいうかも知れませんね)。

また、生地で特徴的だったのが、フラノ、レースなどのいろいろな生地で、 立体感 を感じさせる風合いのものが目立ちました。 生地の織り方、ニットの編み方、縮絨加工、プリーツ加工、など、 従来、立体感を持たない生地に何らかの工夫で立体的ニュアンスを持たせたものです。 加えて、2シーズン程前にレースを中心に特徴が見られはじめた、 フロッキー加工 金糸、銀糸 の使用、 ラメ、スパンコール ビーズ 使いなどの生地も特徴的です。 コンセプトルームで生地とともに提案されていた附属品も、 フロッキー 的(ベルベットのくるみボタン、ベルベットテープ)なもの、 アンティックゴールド の色合い(ゴールドのガラスビーズボタン、 金モール刺繍ボタン、アンティックゴールドメッキ)、 王朝的柄模様 (チロルテープ、ジャガードテープ)、 グリッター感 (ガラスビーズ風透明ボタン、スパンコール使い)等々、 この2,3シーズン在庫切れを起こした商品が尚目立ちました。 これはこれまでのシーズンの踏襲とも考えられますが、 視点を変えると、より、市場性が出てきたとも考えられます。

コンセプトルームに限ったことではないのですが、 今シーズンのプレテックスには、明らかに 「ロマンティック」 のキーワードを読み取ることが出来ます。


附属品関係の企業では、(株)アイリス、御田釦販売(株)、清原(株)、(株)木馬、大杉産業(株)、協和レース(株)、東京吉岡(株)、KMRコーポレーション等を興味深く見て廻りました。

(株)アイリス

ここは国内最大級のボタンメーカーでパリ支店の「イリス・パリ」(う、記憶があやふや)には高級品事業部のボタンがずらりと並んでいるのです。日本のボタンの生産量は本場イタリアに次ぐ勢いだと言われていますがその原動力とも言えるでしょうね。この3年程から、生産技術的な面だけでなく、デザイン的にも大きく前進されていて、ボタンのデザインを仕事としていた私にとってはほんとに悔しいというか恨めしいというか(笑)。但し、今回のプレテックスについては残念ながら1月の展示会(名刺をお渡しすると招待状を頂けたとか。皆さんは名刺、出しました?)に力を注ぐためにかなりセーブされたそうで、毎シーズンの凄さはありません。プレテックスから展示会まで、約2ヵ月半、その時間的ハンデを負って開催される展示会、かなり期待しちゃいますね。

御田釦販売(株)

アイリスに次ぐ大手ボタンメーカーさんで、国内のボタンメーカーとしても長い歴史をもたれるメーカーさんです。やはりここでも系の生地とゴールド系のボタンを組み合わせて提案されるパネルがあり、「ロマンティック」のトレンドを意識させます。
(無理を言って商品
カタログを一冊いただきました。ありがとうございます)

清原(株)

清原さんはボタンメーカーさんではなく、服飾副資材商社(でしたっけ?(コラコラ))さんなので非常に幅広く商品を展示されていました。生地から加工して作る附属品、生地への加工、雑貨関係は充実したブースでした。極細ベルト(確か、この間のコレクションで、グッチが極細ベルトを使ってましたね)用バックルアルミニウム削り出しのボタン、陶器風のボタン、マルチカラーに染められたオストリッチマラボー(鳥の羽毛をいっぱい付けたひものようなものです。ショール襟みたいな感じですね)、フェイクファーショール襟ガラスビーズを使ったアクセサリー、エアリーシステムで作られたソフリナ(合皮の服飾用ヌバック)やベルベットの小さな花のモチーフ等、附属品が単にボタンやファスナー、スナップ等だけでは決してない、ということを改めて感じさせます。また、アマーラオルトナという合皮の服飾用スェード(何と水洗いOK)、ソフリナ、アマーラのパンチング加工、生地に対するガラスビーズ加工透明プリント加工等の生地の部門でも幅広い提案がありました。

(株)木馬

リボン、ブレード等の大手メーカーさんです。フランスにもお店があり、世界的にも有名だそうです。手芸専門店で販売されているリボン、ブレードも木馬さんのものは多いですね。
今回のプレテックスでは、やはり、今、売れている
チロルテープジャガードテープガーランドテープ(今回のコレクションでシャネルが使っていたと思います)の新作、極細のガーランドテープ等が注目です。

大杉産業(株)

こちらもリボン、ブレードのメーカーさんです。やはり、チロル、ジャガードテープ、ガーランドテープの新作が注目です。実際、ガーランドテープは生産が追いつかない程出ているというお話でした。
名刺をお渡しすると商品の
カラーカタログを頂けます。皆さんはちゃんともらいました?

協和レース(株)

レースメーカーさんです。この2,3シーズンはレースが非常に注目され、またこれまでにない新しい感覚のレースも新作としてたくさん出ました。やはり注目はフロッキーレーススピンクルレース(小さな刺繍モチーフが縫い付けられているレースです)、金糸、銀糸を上手に使ったレース等でしょう。

東京吉岡(株)

商品タグ織りネーム、等のメーカーさんです。今回注目したのはストリートファッション系のカジュアルな服に使いそうな、塩ビのパッチが興味深いものがありました。二重構造になっていて、中にエアーが封入してあるものなどが面白く使えると思われます。

KMRコーポレーション

「riri」というスイスのファスナーメーカーの代理店さんです。「riri」のファスナーはプラダの大ブームの際に非常に注目されたのですが国内で扱っていらっしゃる企業が少なく、附属品を扱う方は散々探し回った記憶が新しいと思います。YKKのファスナーとは違って、カジュアル、スポーツ系のデザインのファスナーよりもデザイン的なファスナーの方がぐっとクォリティが高いですね。ファスナーの務歯(むし、読みます。ファスナーの歯みたいな部分ですね)のカットが非常に高精度で凝っています。マルチカラー、銀メッキ、銅メッキの務歯がとても奇麗でした。


さて、一般にファッション業界で扱われる商品で私が注目したのは以上のようなところなのですが、
今回は、
コンピュータとファッション業界の関係についても考えるべきところがあります。SPAという業態をとるアパレルメーカーさんが増えている現在、POSシステムのような流通管理システムはもとより、CAD(製図)システムと生産システムの融合(株式会社ジュンP&E事業部がかなり前から取り組んでいらっしゃいます)、インターネットを利用した情報システムなど、(非常に遅まきながら)ファッションの世界も「電脳化」(笑)がはじまったな、と実感させられます。

また、この業界にもやっとホームページを開設される企業が増えてきました。リンクのページにどんどん追加してゆきますので、ご利用下さい(すいません、12/12現在、工事中です)。


以上、非常に大まかなレポートですが、今回のプレテックスのポイントではないかと思います。

ファッション業界の景気はまだまだ苦しく、人出もちょっとさみしいプレテックスではありますが、 こういう時期だからこそ、 情報 をシビアに捉えて業界の景気回復に努めるべきではないでしょうか。

1997/12/12


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